…?
随分な姿じゃのう綺礼よ。
幕じゃな、慈悲をくれてやるがよい、アサシン。
今思い出すことではないが、自分は生まれながらに欠陥している。
私にとって幸福とは苦しみであり、絶望こそが喜びだった。
私自身その在り方が生き物として悪しきものだと理解していた。
酷い欠陥だ。外道であっても良識が備わっていたのだ。
私はそれを正したいと思い、努力をした。
その最後の試みに、一人の女を愛した。
正確にはそうできたらいいと願って、愛そうとし、子もなした。
その結果、
私には、お前を愛せなかった。
いいえ、貴方は私を愛しています。
…!
宝具、妄想心音。
終わったな。
フッフッ…!?貴様、まさか!
ギ────!
ぬ…!?
告げる。
私が殺す。私が生かす。私が傷つけ私が癒す。我が手を逃れうる者は一人もいない。我が目の届かぬ者は一人もいない。
おのれ貴様貴様ァ…!
打ち砕かれよ。
敗れた者、老いた者を私が招く。私に委ね、私に学び、私に従え。
そうか、ワシを殺すか!
休息を。唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず、私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる。
休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ印を記そう。永遠の命は、死の中でこそ与えられる。
許しはここに。受肉した私が誓う。
ハハハ、それで何が変わる、貴様に救いなどないぞ…!
"この魂に憐れみを"
経典の聖言による、霊体そのものへの攻撃か。魔術師殿には天敵だったと言うわけだ。
そして貴様、既に汚染されていたな。
チ、これは私の失態だ。
…
ほら。貴方、泣いているもの。
それは勘違いだ。
確かに悲しいと思った。だがそれは女の死がではない。
どうせ死ぬのなら、私の手で殺したかった。